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けんえいしんとろくだんち
県営新渡鹿団地
Shintoroku Prefectural Housing Project
Shintoroku Prefectural Housing Project
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DATA
建物名 県営新渡鹿団地(Shintoroku Prefectural Housing Project)
設計者 小宮山昭+ユニテ設計・計画(KOMIYAMA Akira+unites & Planners)
所在地 熊本市渡鹿3-854-1 (周辺地図 MapFanへのリンク)
用途 集合住宅
構造 鉄骨鉄筋コンクリート造
竣工 1993年
備考 くまもとアートポリス参加事業
交通 JR筑肥本線 東海学園前駅下車、徒歩10分。

ちょっと専門的な話になりますが、建築計画学では集合住宅を形状や住戸の重ね方などでいくつかのタイプに分類します。その分類のひとつに廊下・階段と住戸の関係に着目する方法があって、階段室型・片廊下型・スキップフロア型などに分けることができます ※1

階段室型はその名の通り階段室から直接住戸にアクセスするプランで、主に2〜5階建の低〜中層集合住宅で採用されます(十数階建の高層にも少ないながら実例はあります)。片廊下型のように部屋の中を覗かれることがないのでプライバシーが保てるし、両方向の窓を開ければ風が通り抜けるため居住性が高いといった利点があります。ただし、階段室を通じた縦方向の繋がりはあるものの横方向の繋がりがないので、近所つきあいが難しいことが欠点です。

片廊下型は建物側面の廊下から住戸にアクセスするプランで、普通のマンションの多くはこのタイプですね。廊下側の部屋は他人に覗かれやすいために窓を開けにくく、したがって採光や通風をとりにくい難点があります。階段室型とは逆に、住戸の横方向の繋がりはありますが縦方向の関係は薄くなりがちです。

スキップフロア型は階段室型と片廊下型を合成したようなタイプで、階段室型を基本としながらだいたい3層ごとに廊下が設けられます。階段室型と片廊下型それぞれの利点で欠点を補おうとして生まれたタイプです。しかし、廊下がある階の住戸は廊下がない階に比べて居住性が劣るわけで、同じ棟で条件に差がつくのは好ましくありません。それに人間関係の成立は建物のプランで決定づけられるような単純なものではないでしょう。

実際の理由は分かりませんが、かつて公団や公社の集合住宅でさかんに採用されたスキップフロア型は、現在では全く建てられなくなりました。とはいえ、当時建設された住棟の多くはまだ現存しており、公団系の団地に行けば見ることができます。


※1:厳密にはさらに中廊下型・ツインコリダー型・スター型があります。

Shintoroku Prefectural Housing Project01 Shintoroku Prefectural Housing Project02
01 02
新渡鹿団地は熊本市の中心部から車で十数分程度の位置にある県営住宅で、くまもとアートポリス ※2 のひとつとして建てられました。付近一帯は古くからの住宅地で近くには保田窪第一団地(Atsushi版タケ版)や帯山A団地もあります。

この集合住宅はタイプとしてはスキップフロア型に分類されますが、その廊下を外部に持ち出して建物本体との間に空間を作ることで、廊下側の部屋にも採光と通風を確保しようと試みています。その上、交通量の多い幹線道路に対して、宙に浮いたような廊下には緩衝帯とシンボルの両義的な役割を担っています。


※2:元首相の細川氏が熊本県知事時代に建築家の磯崎新と始めたプロジェクト。公共・民間の建築・土木構造物をいわゆるアトリエ派と呼ばれる建築家に設計させて、公共デザインの向上を図りました。このプロジェクトは現在も継続中です。

Shintoroku Prefectural Housing Project03 Shintoroku Prefectural Housing Project04
03 04
水平方向に流れるようなリズムや露わになった架構には、従来の集合住宅では見られないダイナミックな迫力があります。それは決して設計者の独りよがりなどではなく、新たな都市景観の構築を目指したものです。

Shintoroku Prefectural Housing Project05 Shintoroku Prefectural Housing Project06
05 06
廊下を離した上に折板で覆われているので廊下から部屋の中は見えません。よって窓は開けやすくなったので少なくとも居室の通風は確保できています。しかし、もう少し明るいかと思っていたのですがやっぱり暗いですね。それに、建物側から見るとかなり圧迫感があるなあという印象を受けました。

Shintoroku Prefectural Housing Project07 Shintoroku Prefectural Housing Project08
07 08
窮屈に感じたのは、廊下自体のボリュームが大きいこともありますが、その壁面というか外皮が閉鎖的だという理由もあると思います。一応、屋根は部分的にアクリルを使っているものの、大部分がグレーの面で囲まれた空間は薄暗くて寂しい雰囲気です。もう少し開口率を上げた方がよかったのでは。夜にここを歩くのはちょっと怖いかもしれません。いっそ全面ガラス張りにしたら面白いでしょうけど、コストとメンテナンスの問題から実際には難しいでしょうね。

Shintoroku Prefectural Housing Project09
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住戸は基本的にフラット※3ですが最上階だけはメゾネット※4になっています。画像09はそのメゾネット住戸にアクセスする廊下。低・中・高の各層で廊下の雰囲気が異なっていて住棟全体で立体的な街区を形成しているといえます。

画像10の建物は集会所です。特徴的な高層住宅の足下にありながら集会所も十分に存在感のあるデザインがなされています。共用施設やオープンスペースが比較的充実している点は公共住宅が民間マンションより優れている部分です。

なお、廊下を持ち出すプランは新渡鹿団地が最初ではありません。私は第二緑ヶ丘団地(福岡県)という集合住宅を確認していますし、他にも存在する可能性があります。ご存じの方は情報をお寄せください。


※3:flat=集合住宅の住戸形式のひとつで、住戸が1層のみで構成されているタイプ。日本の集合住宅は大部分がフラットです。

※4:maisonette=住戸が2層以上で構成されているタイプ。したがって住戸内部にも階段があります。

※5:注意! 見学の際は住民のプライバシーに十分な配慮をお願いします。


参考文献 関連サイト

最終更新日:2004年11月6日
作成日:2004年11月6日
撮影時期:2002年11月、画像10のみ1995年頃
作成者:タケ(旧名 tks )(blogmail

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