
かぜのおかそうさいじょう
風の丘葬斎場
Kaze-no-Oka Crematorium |
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DATA
| 建物名 |
風の丘葬斎場(Kaze-no-Oka Crematorium) |
| 設計者 |
建築=槇文彦/槇総合計画事務所(MAKI Fumihiko/Maki and Associates)
ランドスケープ=ササキ エンバイロメント デザイン オフィス※1 |
| 所在地 |
大分県中津市大字相原3032-16(周辺地図 MapFanへのリンク) |
| 用途 |
火葬場、斎場 |
| 構造 |
鉄筋コンクリート造 |
| 竣工 |
1997年 |
| 備考 |
1998年度BCS賞
2002年度公共建築賞優秀賞
2003年度グッドデザイン賞金賞(ランドスケープデザインに対して※1) |
| 交通 |
車=国道10号線 > 国道212号線 |
私は今までにいくつかの槇文彦の建築を訪れたことがあります。
福岡大学60周年記念会館(福岡市)の立面や空間の構成、
ヒルサイドテラス・
ヒルサイドウエスト(東京都)の街並み、
東京キリスト教会(東京都)の柔らかで繊細な空間…。これらから私は槇さんの建築に対して都会的・知的・クール・ホワイトといった印象を受けました。確かにどれも万人に開かれたパブリックな建築なのですが、なんとなくオシャレな人達が集う場所というか、意地悪くいえばお高くとまった雰囲気がないとはいえません。少なくとも、槇さんの建築は都会にしか成立しないと思っていました。この葬斎場を訪れるまでは。
※1:ランドスケープデザインの設計事務所については書籍やウェブサイトによって名前が異なっています。これは設計担当者が竣工後に勤め先を変えたためです。このページでは「新建築」の記載に基づいて竣工時の事務所名を載せました。なお、グッドデザイン賞のサイトに記載されているオンサイト計画設計事務所とは移籍後の事務所です。
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| 01 |
風の丘葬斎場は大分県中津市の郊外、田畑や緑地が残るのどかな風景の中にあります。小高い丘の敷地は公園として一般に開放されているので葬儀参列者でなくとも立ち入ることができます。公園といってもありきたりのものではなく、ランドスケープデザイナーが手掛けた結果、建築と環境が調和した素晴らしい空間が生まれています。
葬斎場の南側に広がる公園はゆるやかなスリ鉢状になっているので、閉鎖的な感じを受けることなく程よい具合に独立性が保たれています。大地に包まれているといったら大げさですが、心地よい安堵感を抱きます。一見、控えめながら実はかなり優れたデザインです。
敷地の一角には古墳があります。つまりここは古代から現代に連なる葬送の空間なのです。古墳の発見は葬斎場の建設が決まった後のことでまったく偶然の結果なわけですが、迷惑施設として敬遠される場合が多い火葬場にあって、「この場所こそふさわしい」と納得がゆく稀な例といえるでしょう。
左側の傾いた八角形の部分は斎場、右側の赤茶色の壁は待合室部分の側面にあたります。壁の材質はコールテン鋼※2という鋼材です。公園を訪れる一般の人はたぶん古墳に近い方を散策すると思われるので、あえて奥の方に行かない限り、待合室で火葬が終わるのを待つ参列者と視線を合わせることはないでしょう。このように赤茶色の壁は衝立の役割を担っています。(案内図をご覧ください)
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| 02 |
03 |
コールテン鋼やレンガといった素材の質感が強く表れた外観です。私の知る限り、槇さんの建築で素材感を強く主張したものはこれまでなかったように思います。その意味で、彼の業績において重要な位置を占めるものといえるでしょう。
八角形の斎場はランドマークの役割を担っているものの、微妙に傾斜していること以外は極めて抑制されたデザインです。控えめなシンボルという相反する要素を両立させた手腕には感心します。
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| 04 |
車寄せから前庭を見たところ。右手が斎場や事務所への出入口、左手の通路はエントランスホール(画像08・09)に向かっています。雑誌に掲載された平面図を読む限り、到着(棺を告別室に運ぶ)と退出(収骨して帰る)のいずれも左手の通路が動線となっているようです。両者が重なるのはいかがなものかという気もしますが、あるいは重ならないよう施設側が上手く誘導するのでしょうか。当然ながら動線計画は設計者と市が十分に協議したでしょうし、炉の数が6基と比較的小規模な火葬場ですので、これでよいのかもしれません。
中庭の様子。部材の見付の細いことといったら! 繊細なディテールと抜群のプロポーションには唸るばかりです。写真でしか知りませんが
カルロ スカルパのブリオン家墓地を思わせる空間だと思いました。
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| 07 |
炉前ホール、つまり棺を炉に入れる場所であり、死者と最後のお別れをする空間となります。左側の前述の中庭から高い壁と深い庇の隙間を縫って差し込む西日が美しい。ただし、これは閉館直前に撮影した画像で、実際に葬儀参列者がいる時間にはここまで奥に日は差し込まないでしょう。
エントランスホールです。左の扉は告別室に、右の扉は収骨室に通じています。厳粛な雰囲気ですが、スギ板本実型枠による打放しで木目が付いたコンクリートの表情やトップライトからの光が空間を和らげています。画像09から分かるように柱は屋根を支えておらず、構造的には必要ありません。つまり純粋に象徴的な役割があると考えられます。私は、柱がトップライトに貫入する様子から、魂が天に昇ることを表しているように思いました。
※3:注意! 見学の際は葬儀参列者の迷惑とならないよう十分な配慮をお願いします。内部見学は参列者が帰った後が望ましいと思います。ただし、17時には閉館します。私はアポなしで見学させてもらえましたが、できれば事前に問い合わせをした方がいいでしょう。
※4:中津市の図書館も槇文彦の設計ですが見落としてしまいました。葬斎場と併せて見学をお勧めします。
参考文献
- 「新建築」1997年7月号(新建築社)
- 「日経アーキテクチャー」2002年11月11日号 特集:環境デザイン2002(日経BP社)
- 「建築グルメマップ2 九州・沖縄を歩こう!」281頁(エクスナレッジ)
関連サイト
最終更新日:2005年3月26日
作成日:2004年12月5日
撮影時期:2002年10月
作成者:tks