




発電所時代はタービン室だったのでタービン ホールと名付けられたこの空間は,現在はインスタレーション※1の展示空間として使われています。オープンするやいなや,現代芸術シーンにおいて最も注目される空間になりました。
| ※1: | 定義が難しいが,要約すると絵画や彫刻といった単体作品の枠を超えて,空間体験によって表現を行う芸術作品。 |
大きなトップライトから自然光が降り注いでいます。タービン ホールだけでなく他の展示室にも窓がありました(前ページ【03・04】のスリット状の窓がそれ)。従来の美術館では作品の変色を避けるために展示室は完全な人工照明でしたが,最近の美術館はあえて自然光を入れる場合が多いですね。もちろん紫外線はカットしているはずです。
タービンホールの内部に鉄骨が露出していることから明らかなように,この建物の構造は鉄骨造であってレンガの外壁は荷重を負担していません。イギリスは伝統を重んじる一方で多くのモダニズム建築が建てられた国でもあり,戦後に建てられた産業施設ならば機能主義的なデザインでもよかったはずです。そこをあえてアールデコというデザインにしたのは,やはり発電所の設計者であるジャイルズ ギルバート スコットの好みという他にないでしょう。ちなみに彼の祖父は建築家のジョージ ギルバート スコット※2です。
| ※2: | イギリスにおけるゴシック リヴァイヴァル様式の立役者として有名。代表作はセント パンクラス駅(のステーションホテル)。 |
私が訪れた平日も,難解な現代美術専門の施設にもかかわらず来場者はとても多く,とりわけ多くの学生が熱心に模写をする様子には感心しました(日本では模写をする人は見かけないなあ)。また,時系列ではなく関連するテーマで並べるというユニークな展示方法は,作品を理屈ではなく感覚的に見るように促す効果があると思いました。
最上階(前ページの外観写真に見えるガラスボックス)にはカフェとレストランがあります。カフェは座席数が少ないので混雑時には座れないかもしれません。ただ,その際でも立ち入りはできます。建築ファンなら,展示物の鑑賞はパスしてもカフェの眼前に広がるテムズ河とセント ポール大聖堂の光景【07】はぜひ見ておきたい。
最近,日本でも事例が増えつつあるリノベーション(改修・改築)やコンバージョン(用途転換),つまり古い建物を再生して活用する方法は,ヨーロッパでは以前から行われてきました。その中でもテート モダンは,発電所から美術館へと全く異なる用途への見事な転換を遂げて,経済・観光・文化など多方面で大きな成功を収めた,リノベーション/コンバージョンの最も良いお手本と言えるでしょう。
| ※3: | 参考までに,日本にも発電所を美術館に転換した事例があります。富山県入善町の下山(にざやま)芸術の森 発電所美術館です。 |
(終わり)
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